残念令嬢、今世は魔法師になる
 イライラしていると、フェデルがわざとらしく困惑の表情を向けてきた。

「そういうところだよ。ノエインはいつになったら僕に心を許してくれるのかな?」
「一生ないかもな」
「寂しいこと言うー」

 貴重な時間が減っていく。
 最近妙な夢ばかり見て睡眠不足だ。こんなところで無駄話に付き合うくらいなら、さっさとひとりになって仮眠を取りたい。
 空気読んでくれないんだよなあ、この王太子。それともわざとか?


 俺が半眼で睨みつけると、フェデルは急に笑みを消し、真顔で切りだした。

「ねえ、これは真面目な話。ミレアは普通じゃないって君も気づいてるだろ?」
「何のことだ?」
「彼女はまだ13歳だよ。発言も大人びているし、知識もずば抜けている。彼女、学科すべての小テストで毎回満点取るらしいよ。転籍したばかりなのにね」
「実技は最低レベルだけどな」
「それは言わないであげて」

 フェデルは軽く笑い、ふたたび真顔に戻って続けた。

「まあ、偶然とはいえ魔力値1000を超える実力を出したのは本当だしね。そんなことができる魔法師はこの国で君と魔塔の管理者くらいじゃないか。おかしいと思わない?」

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