残念令嬢、今世は魔法師になる
「私も、リベラと友だちになれたから、ここまで頑張れた。本当にありがとう」
「ふふ、これからもよろしくね」
「うん、よろしく」

 私たちはふたりで向かい合って微笑んで、それから「おやすみ」を言って静かに眠りに落ちた。
 今夜はきっといい夢が見られそうだなって思った。
 心地いい眠りに入って、それからそのあとは、少しばかり夢を見た。
 けれど、あまりいい夢とは思えなかった。

 雨の夜の夢。誰かを叫ぶ声。
 誰もいない暗い場所。
 たしかにそこは私のいた場所だ。
 泥水の中を裸足で駆けて、転んで膝をついて、滝のような雨に打たれたあの夜のこと――。

「……ミレア、ミレア」
「えっ……」
「大丈夫? うなされていたわ」

 となりへ目をやると、リベラが不安そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
 私は額に汗をかいている。

「変な夢を見ちゃったみたい。ちょっと、お手洗いに」
「私も行くわ。このお屋敷ちょっと暗くてわかりづらいの」

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