残念令嬢、今世は魔法師になる
「メンベリ草の件もある。警戒しているに決まってる。前の料理長は解雇処分で済んだが、今回はれっきとした犯罪だ。言い逃れはできない」

 やっぱり、カイラに飲ませようとしている。
 となりでリベラが震えているのがわかった。どうやら彼女も理解できたようだ。
 何の目的でカイラに薬物を与えようとしているのか、それを知るよりも今はバレないようにそっと離れるしかない。

 私はリベラに目配せして、慎重に足を動かした。
 そして、ふたりで厨房から静かに距離を取り、曲がり角へ差しかかったときだ。
 突如、目の前に執事が現れた。
 それはまるで暗闇から現れた恐ろしい化け物みたいな表情で、彼は目を見開いてこちらを凝視していた。
 思わず私もリベラも「ひいっ!」と悲鳴を上げてしまい、それに気づいた料理人たちが厨房から出てきてしまった。

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