残念令嬢、今世は魔法師になる

32、誰かと勘違いしている

 アンデル侯爵家で起こったことは瞬く間に広がり、社交界に衝撃が走った。
 一部の貴族が王太子妃候補になりそうな令嬢を排除するためにやったと、公に発表されている。
 しかし、フェデルはどうやら少し見解が違うようだ。
 フェデルは俺をわざわざエルカノの森へ呼びだし、そんなことを言った。

「この件に関して裏で動いていたのは、ジッケル伯爵だけではないと僕は思っている」
「というと?」
「憶測だからはっきり言えないけどね。ジッケル伯爵はそれほど大きな力を持っていない。ベルミスを手に入れるルートも取引相手の謎の死で絶たれてしまった」
「つまり、どういうことだ?」

 はっきり言わないフェデルに眉をひそめる。
 すると、フェデルは肩をすくめて言った。

「黒幕は他にいる。今回の件があきらかになったから、しばらく身をひそめるだろうけどね」
「誰だよ?」
「それは言えないよ」
「なんだよ」

 イラついて声が荒々しくなった。
 中途半端に話すなら最初から言わなければいいものを。

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