残念令嬢、今世は魔法師になる

33、戻ってきた日常

 ある朝、目を開けると驚くほどすっきりとしていた。
 頭の痛みも体のだるさも消えて、まるで長く深い眠りからやっと解放されたような気分だった。
 ゆっくりと体を起こして窓のほうへ目を向けると、カーテンの隙間からやわらかい光が差し込んでいた。
 私はうーんと背伸びをして、深く息を吸い込んだ。

「なんだか生き返った気分」

 すべて悪夢だったのかもしれないと思うほど、気持ちが晴れやかだった。

 着替えを済ませて身支度を整え、階段を下りてダイニングルームへ向かう。
 扉を開けるとパンの香ばしい匂いとスープの香りがふわっと鼻をくすぐった。
 すでに両親が座って待っていたので、私はスカートの裾をつまみ、控えめなカーテシーをおこなった。

「おはよう。お父様、お母様」

 挨拶をすると、両親は安堵したように微笑んだ。

「おはよう、ミレア。もう起きて大丈夫なのかい?」
「無理しなくていいのよ」

 ふたりの優しい声に反応し、私は満面の笑みで答える。

「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫」

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