残念令嬢、今世は魔法師になる
 侍女に椅子を引かれて腰を下ろすと、目の前にふわふわのパンケーキが置かれた。
 他には食用花のあしらわれたサラダ、香ばしいベーコンエッグ、なめらかなじゃがいものポタージュスープがある。
 侍女が紅茶を淹れてくれたあと、パンケーキにクリームを添えて、シロップをたっぷりかけてくれた。

「美味しそう。いただきます」

 ナイフを入れるとすうっと生地にやわらかく沈むパンケーキ。
 それを口に運ぶと、とろりと甘いシロップとクリームが広がり、ふわっとした生地が溶けていく。
 頭の中に花畑の世界が広がって、そこで心地よく浮かんでいる気分になった。

「幸せだあ」

 思わず呟いた言葉に、両親が目を合わせて微笑んだ。


 そして、ひさしぶりの学校だ。
 少し緊張しながら正門を通ると、制服を着た生徒たちが目に飛び込んできて、少しなつかしい気分になった。
 前世ではあんなに嫌だった学校なのに、今は楽しみでしかない。

 少し授業に遅れているから頑張って追いつこう。
 そんな意気込みで校舎へ向かう。
 すると他の生徒にまぎれて、ふいに声をかけられた。

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