残念令嬢、今世は魔法師になる
 彼女の足を見ると怪我をしていない。体中のどこにも傷は見当たらない。
 それを確認すると安堵のため息がこぼれ、肩の力が抜けた。

「あなたのお名前は?」
「カ……えっと、ミレア」

 訊かれて、私は思わず口にしかけた名前をすぐに訂正した。
 カイラはそれを見て、少し笑みを浮かべながら自分の名前を口にする。

「私はカイラよ」

 どくんっと胸が高鳴った。
 やっぱり目の前にいるのは正真正銘のカイラなんだ。
 前世の私の姿。だけど、きっと中身は別人なんだわ。
 だって、私は今ミレアとして生きているんだもの。
 こんなことが起こるなんて――

 なぜか涙がぼろぼろこぼれ落ちた。
 カイラは驚いた顔で慌てだす。

「どうしたの? どこか痛いの?」

 私は泣きながら、ただ首を横に振った。
 カイラが無事だったこと。もう少しで傷つけてしまうところだったこと。
 そして、懐かしさと切なさがない交ぜになって、胸の奥で抑えきれなくなった感情が一気にあふれだしたみたいだった。

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