残念令嬢、今世は魔法師になる

34、前世の真実(ノエイン)

 雷鳴の轟き、雨が地面を叩きつける中、俺はどうにかして屋敷の前まで辿りついた。
 20年以上一度も手入れをせず、苔と蔦に覆われた建物だ。
 錆びた扉を開けると、湿った空気と木の腐臭が鼻を刺す。

 俺はとんでもなく愚かなことをしようとしている。
 だが、それでもいい。
 これが俺の選んだ道だ。

 足を引きずりながら軋む廊下をどうにか歩く。ようやく立っている状態だった。
 いつ倒れてもおかしくないだろう。
 しかし、この日のために準備を進めてきた。すべて完了している。
 最後に魔力をすべてそこに注ぐだけだ。

 何もない広い部屋にあるのは、床に描かれた魔法陣だけ。
 古い魔法書に一部しか記述の残されていない禁忌の魔法。
 それが<時間逆行魔法>だ。
 始祖エリオット・ヴァレスの遺産である。

 長年研究がされてきて、いまだに謎が解明されていない。
 それを俺は独自に改造し、20年かけて完成させた。

 すべては復讐のために。

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