残念令嬢、今世は魔法師になる
 始まりは宮廷魔法師として王宮に配属されたときだ。
 当時19歳で、王太子フェデルの相談役兼魔法師として抜擢された。
 しかし、その頃すでにあの場は腐りきっていた。
 フェデルの父である国王はベルミス中毒に陥っており、冷静な判断ができない状態で、実質宰相が王権を握っているようなものだった。
 フェデルは早々に王位に就きたがっていたが、一部の貴族派勢力が彼の王位継承を妨害した。

 俺が26歳のときに国王が崩御し、フェデルが王位に就いた。
 王宮内はフェデル派と妃のリリアンの一族であるデミア派に分裂し、不穏な空気だった。
 俺はフェデルの配下だったため、王宮内で起こる不穏な事象を次々と排除していった。
 デミア派は邪魔者を排除するために、あらぬ罪を俺に着せた。

 魔塔の管理者だった俺の師匠が不穏な死を遂げたあと、俺に殺害容疑がかけられた。
 理由は師匠との仲違いだ。もちろんそんなことは身に覚えがない。
 しかし、魔塔の魔法師たちはデミア侯爵の手中にあり、口裏を合わせることなど容易かった。

 俺は身に覚えのない罪を次々と積みあげられた。
 禁忌魔法を研究しているとか、毒薬の開発をおこなっているとか。

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