残念令嬢、今世は魔法師になる
 そして、司法も腐敗しきっていた。
 裁判にかけられた俺は不穏分子として死罪を言い渡された。
 いっそ目の前の敵を一掃してやろうかと思ったが、相手は魔塔の上級魔法師を全員集めて俺専用の無効化魔法を発動させた。
 どうやらわざわざ数年かけて準備していたらしい。徹底している。
 王宮にほとんど味方のいないフェデルが、唯一権力を行使できたのは、俺の死刑をどうにか追放処分に変えることだけだった。
 グランヴェール家とフェデルのために、俺はその処分に従った。

 追放されたあと、王宮の情報が外に出ることは一切なかった。表向きは平穏な統治が続いているように見えたが、俺にはわかっていた。
 王の名を冠しながら、フェデルは孤独に抗い続けていたのだろう。

 そんなフェデルは43歳で死去した。
 彼には跡継ぎがおらず、リリアンが玉座に就き、デミア侯爵の傀儡としてこの国を統治しようとしていた。
 これにより、デミア一族の策略は完遂される。

 俺は追放されてからこれまで、禁忌魔法を研究してきた。
 罪状の一つが禁忌魔法の研究なら、いっそ本当に極めてやろうと思ったのだ。
 完成したら俺自身が逆行し、デミア侯爵の罪を暴いてやる。
 そんな正義感の皮を被った復讐のために、およそ20年孤独の中で生きてきた。

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