残念令嬢、今世は魔法師になる

2、気づいたら13歳だった

 ああ、なんてふかふかのベッド。
 それに、かすかに甘い香りが漂っている。これは香水かしらね。
 体が軽くなったみたいで気分がいい。
 これが天国というなら、なんて素敵な場所なのかしら。

「……ミレア、ミレア」

 誰かが声をかけてくる。
 でも、私の名前はカイラよ。
 死んでも一応、名前だけは憶えているのよね。

「ミレア、しっかり」
「死ぬんじゃない!」

 今度は切羽詰まったような男女の声が重なる。
 死ぬなと言われても、もう死んでしまったのに、いったいどういうことかしら?

 そろりと目を開けると、まぶしい視界が揺れた。
 そこにぼんやりと男女の顔が映る。
 だんだんとはっきり見えてきて、美しい金髪の女性と茶髪の男性がこちらを覗き込んでいるのだとわかった。
 人にこうやって話しかけてもらえるなんてひさしぶりだわ。
 いいえ、人の顔を見ること自体ひさしぶりなのよ。

 ――ん? 私、目が見えている?

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