残念令嬢、今世は魔法師になる

9、魔法師の少年の正体

 あの祭りの日、彼は黒ずくめでロングコートといういかにも魔塔の魔法師という風貌だった。けれど、今は私と似た制服を着ているからずいぶん印象が違う。
 つまり学生らしい雰囲気がある。
 それに、あのときは気づかなかったけれど、彼は紫水晶のイヤリングをしている。それがとても綺麗でおしゃれな人だなあと思った。

 あれ? でも、どこかで見たことがあるような――

「あんた誰だ?」

 彼は眉をひそめて訊いた。
 私はがっくりと肩を落とす。

「覚えてないの?」
「どうでもいいことは記憶しないことにしてる」

 つまり私はどうでもいい部類なんですね。
 まあ、たしかに通りすがりに会っただけだしね。でも、一応伝えておく。

「お祭りの日に町で会ったの。あなたは私に魔法を使うなって怒ったのよ」
「ああ。魔法科だったのか。なのに魔力制御もできないのかよ。普通科に行けよ」
「元は普通科だったの。あなたに言われて、ちゃんと魔法の基礎を学ぶために転籍したんだよ」

 すると彼の目つきが変わった。怪訝な表情で私を睨むように見る。

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