残念令嬢、今世は魔法師になる

10、前世の魔法師との思い出

 今日は本当に疲れた。
 毎日魔法科の勉強についていくのも必死なのに、よりによって王太子フェデルと再会してしまうなんて。
 だけど、今世では私が彼と関わることはないはずだ。
 そして、カイラとも関わらせたくない。

 フェデルはデミア侯爵家の令嬢と恋仲になるのだから。

 そういえば、前世でフェデルは20代後半で国王になったのだけど、王妃は子をなすことはなかった。跡継ぎのいないフェデルは公爵家から養子を迎えたか何かで王家の存続を図ったようだけど、あれからどうなったのかよくわからない。

 40歳くらいから私は病が悪化して晩年は視力も弱くなり、新聞を読むことができなくなった。使用人の噂話でフェデルが亡くなったことは耳にしたけれど。
 王室の事情など、その頃にはどうでもよかった。
 私自身にも死が迫っていたのだから。

 私の晩年の思い出なんて寂しいものだ。
 夫に先立たれ、義理の息子に離れへ追いやられ、使用人にさえ疎まれていた私に、唯一気にかけてくれた人がノエインだった。

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