残念令嬢、今世は魔法師になる

11、ひとりぼっちじゃない幸せ

 昨夜はなんだかよく眠れなかった。
 食欲もわかなくて朝食のパンケーキを残したら、両親がひどく心配してしまって学校を休むように言われたので頑張って食べた。
 昔のことをあれこれ考えたって意味ないよね。
 せっかく新しい人生を始めたのだから前向きに楽しく生きていきたいし。

「やあ、おはよう」

 どきりとして肩がびくっと跳ねた。
 振り返るとそこには金髪碧眼の美麗な笑顔が太陽に照らされてまぶしく輝いていた。

「うっ……王太子殿下」
「名前で呼んでもいいよ」

 絶対にイヤ……!

 私が形式的なカーテシーをしようとしたら、彼は手で制止した。

「そんなことしなくていいよ。ここは学校だし、僕らは同じ学生なんだからね」
「い、や……そういうわけには」

 私がしどろもどろになっていると、周囲から女子たちの「きゃああっ」という歓喜の声が上がった。

「フェデル様だわ!」
「ああ、朝からお顔を拝見できるなんて!」
「フェデル殿下ーっ!」

 女子たちがきゃあきゃあ叫ぶのを、私は冷めた目で見つめた。
 フェデルは女子たちに笑顔で手を振っている。その仕草がきらびやかで、周囲はさらに盛りあがった。

 みんな騙されているんだ。この王太子は遊び人で何人もの女の子を口説いているんだよ。

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