残念令嬢、今世は魔法師になる

12、私だけが知っている真実

 広い講堂には魔法科の生徒が集まった。
 最初に院長先生の話があり、そのあと専門の先生が古代の魔法についての話をして、あとは学年トップの子たちの魔法の実演があった。
 水魔法でしゃぼん玉を作る子や、火魔法でたくさんのキャンドルを灯す子、風魔法で中空を舞う子と続き、次の人が登場した瞬間全員が歓声を上げた。

「え? 何、みんなどうしたの?」

 私は初めてなので何が起こったのかよくわからず、となりのリベラに問いかけた。
 するとリベラも歓喜の表情を私に向けた。

「ノエイン様よ」
「えっ⁉ 」
「彼はすごい人なの。学年トップどころか、この学院のトップなのよ」

 きゃあああっ、という悲鳴じみた声に耳が痛くなる。

「そ、そんなに、すごいの?」

 私が耳を抑えながら訊ねると、リベラは両手の拳を握りしめて興奮状態で言った。

「そうよ。あのグランヴェール公爵家の令息だもの。しかも、兄弟でもっとも魔力が強いと言われているお方なの」
「え? そうだったの?」

 グランヴェール公爵家は五大貴族の中でもっとも強い権力を持つと言われている。たしか第二王女の母親がグランヴェール家だった気がする。
 名だたる魔法師を輩出する一族ではあるけれど、私が王宮にいた頃にノエインはいなかった。
 まさか彼があの一族の人間だったなんて――。

< 64 / 236 >

この作品をシェア

pagetop