残念令嬢、今世は魔法師になる
 そんなわけで私は放課後にノエインの指導を受けることになった。
 その噂が広まるのに時間はかからなかった。案の定、クラスの女子たちが不満をぶちまけてきた。

「どうしてあなただけ特別なのよ」
「ノエイン様のご指導ですって? 意味がわからないわ」
「彼の指導を受けたい女子は山ほどいるのよ!」

 そんなことを言われても、私にどうしろと?

 怒気をはらんだ視線に囲まれて、私はすっかり返事に詰まってしまった。
 何を言っても無駄だと直感でわかる。この人たちはノエインのファンらしいから、理屈なんて通じないだろう。

「あなたみたいな魔力の弱い人間が特別指導だなんて、いったいどんな卑怯な手を使ったの?」

 さすがに胸が痛んだ。そこまで言わなくても、と思う。
 どうにかこの場を収めなくちゃと焦っていたそのとき、リベラがすっと私と彼女たちのあいだに割って入った。

「あなたたちも見たでしょ。ミレアの魔力は弱くないわ。魔法に触れる機会がなかっただけなのよ。ノエイン様の指導を受ければ確実に実力が上がると思うわ」

 リベラの毅然とした言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。
 誰にも信じてもらえなくても、あなたがそう言ってくれるならそれだけでいい。
 たったひとりでも私のことを信じてくれる人がいるのなら。

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