残念令嬢、今世は魔法師になる

16、ふたりきりの授業

 ノエインの指導は放課後におこなわれる。
 場所はこのあいだ試験を受けたエルカノの森にあるガラス張りの訓練棟だ。普段は施錠されている施設だけど、この指導のために特別に許可を得て使わせてもらうことになった。

 最後の授業が少し長引いてしまい、私は急ぎ足でそこへ向かった。
 訓練棟に着いて扉を押し開けると、中は静まり返っていた。
 誰もいない。ほっと胸を撫で下ろす。

 よかった。まだ来ていない。初日から遅刻するわけにいかないもんね。

 夕暮れの空がガラス張りの室内を黄金色に染めあげている。
 ドキドキしながら待っていると、突然目の前が真っ暗になった。

「え? 何? どうして」

 何が起こったのかわからず、私は戸惑いながらその場に立ち尽くした。
 壁も床もガラス越しに広がっていた空さえもすべてが闇に包まれている。
 どこが出口なのかもわからず、手を伸ばしても何も触れられない。

「だ、誰か……」

 泣きそうになりながら震えていると、あたりがぱあっと明るくなった。
 元の景色に戻って安堵したのもつかの間、背後に気配を感じた。
 びくっと肩を震わせて恐る恐る振り向くと、すぐそばにノエインが立っていた。

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