初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして

2

あれから一年。

理世は転職し、ライターの仕事に就いていた。
ライターといっても、小さな出版社で、取材も写真撮影も一人でこなすことが多い。
忙しさは増したけれど、自分で道を切り拓いている実感が、何より心地よかった。

文章を考え、カメラを構え、時には街角で偶然の出会いをネタにする。
誰かに依存せず、自分の力で作り上げる喜びは、昔の自分では想像もできなかったことだった。

それでも、心の片隅にあの人の面影がちらりと浮かぶ。

滉星の優しい笑顔。
忙しい毎日の中でも、時折思い出す。

理世はパソコンの前に座り、記事の締め切りに集中しながらも、ふと窓の外を見やる。

「……でも、私は前に進んでる」

あの出来事たちの思い出で、私は前進できると思っていた。
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