初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして

3

理世が帰った後、カフェの空気は少し落ち着きを取り戻した。
店長の田中駿斗は、カウンター越しに滉星を見上げ、好奇心丸出しで口を開いた。

「オーナー、あの美人で、とびきりスタイルの良い、あの人とはどういう関係なんですか?」

滉星は軽く肩をすくめる。
「……昔付き合ってた人だ」

「えー! オーナーも男だったんですね」
田中は驚きと興奮を隠せず、カウンターに肘をつく。

「……なんてことをいう」
滉星は苦笑しながら、少し目を細める。

「だって、今は女の影すらないじゃないですか」
田中の目はキラキラしている。

「……今はいいんだよ」
滉星の声は低く落ち着いていた。

「綺麗な人でしたね」
田中は思わず口をつく。

「……そうなんだよ」
滉星も微かに微笑む。

「彼氏いるんじゃないっすか?」
田中は鋭く突っ込む。

「……そうだよな」
滉星は小さく頷く。

「顔に似合わず、奥手なんですよね、オーナー」
田中の目は楽しそうに輝く。

「……なんてことをいう……当たってるけどな」
滉星は苦笑しながら、少しだけ目を逸らした。

昔話と恋愛事情を挟みながらも、どこか心地よい空気が漂った。

「……再会して、どうだったんですか?」
田中が小声で尋ねる。

滉星は少し間を置き、静かに答えた。
「……懐かしかった。けど、今は過去の思い出だ」

田中はにやりと笑う。
「ふーん、オーナーも色々あったんすね」

滉星は軽く肩をすくめ、グラスの水をひと口飲んだ。

その奥に、ほんの少しの微笑みが隠れているのを、田中は見逃さなかった。
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