初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして
少し時間が過ぎてから。
滉星は、氷の入ったグラスに静かにブルーのリキュールを注ぎ、透明なソーダで満たしていく。
鮮やかな青がゆっくりと広がり、夜の海のようにきらめくカクテルが出来上がった。

「ブルーラグーン」
そう呟きながら、滉星は理世の前にそっとグラスを置いた。
カウンターのランプに照らされて、グラスの青が理世の横顔を淡く照らす。

「……きれい」
思わず声に出すと、滉星は微笑んだ。
「カクテル言葉って知ってる?」

理世は首を傾げる。
「……分からない」

滉星は少し挑発するように、視線を絡めながら低く囁く。
「……じゃあ、調べてみて」

理世は戸惑いながらもスマホを取り出し、指先で検索を始める。
「えっと……ブルーラグーン……」
表示された文字を目で追った瞬間、理世の頬が一気に赤くなった。

『永遠の愛』

その言葉が画面に浮かんでいる。
「……っ」
理世は思わず画面を隠そうとしたが、滉星はその仕草を見逃さず、笑う。

「調べた?」
「……」
理世は言葉に詰まり、ただ小さく頷いた。

滉星はカウンター越しに身を少し乗り出し、理世の耳元へ顔を寄せる。
「……そのままの意味だよ」

甘く低い声に、理世の胸は大きく跳ねる。
カウンターに置かれたブルーラグーンのグラスが、二人の間の温度をさらに高めていく。

周りの客たちは気づいていた。
視線を交わすたびに、声を交わすたびに、二人の世界だけが甘くとろけるように輝いて見える。

田中は奥で皿を拭きながら、ため息交じりにニヤついた。
(……おいおい、ラブラブ光線が漏れすぎっすよ。見てるこっちが照れるっての)

理世はカクテルをそっと口に運ぶ。
爽やかな甘さとほろ苦さが広がり、心の奥まで痺れるように沁み渡る。

――永遠の愛。

その言葉が頭から離れないまま、彼女は滉星の視線に再び絡め取られていた。

「……ずっと、一緒にいてほしい」
滉星の低い声が、静かな夜の店内に溶けた。

理世は胸がいっぱいになり、言葉を探す代わりにこくんと頷いた。

「もう、離れたくない」
理世の声は小さな囁きだったが、その響きは滉星の心を確かに揺さぶった。

互いの想いを再び重ね合わせた二人。
失った時間を取り戻すように、見つめ合う視線は優しく、どこか切なく、そして揺るぎないものへと変わっていく。

――こうして、二人の初恋は、再び静かに、しかし確かに始まったのだった。
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