初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして

【ウォッカアイスバーグ】

編集部の会議室。
編集長から突然の言葉に、理世は目を丸くした。

「連載を任せたい」
「え?……私がですか?」

驚きとともに胸が高鳴る。これまで小さな記事や単発の特集ばかりだった自分に、ようやく大きなチャンスが巡ってきた。
紙面は小さめで、コラムのような形式とはいえ、連載は連載。読者が毎号楽しみにするものだ。そこには確実に責任と、編集部からの期待が込められている。

「……がんばります」
理世は小さく呟いた。自分に言い聞かせるように。

一方その頃、滉星もまた大きな転機を迎えていた。
建築事務所の一角で、如月建築の代表・如月が声をかけてきた。

「コンペですか?」
「そうなんだ。次のプロジェクトはかなり規模が大きくてね。信頼する君と一緒にできないかと思ってね」

如月といえば、業界でも名を知られた建築士。その彼が自分をパートナーに選んでくれたという事実は、誇らしくもあり、同時に重みを感じさせた。

「もちろんです。如月さんと組めるなんて、光栄です」
滉星は即答した。

けれど心の奥で、ふっと浮かぶ。
「……忙しくなるな」

同じ時刻。
理世もまた、編集部を出てから同じことを思っていた。

新しい挑戦は嬉しい。けれど、滉星と過ごす時間はどうなるのだろう。
会いたい気持ちは募るのに、二人とも同じように前に進もうとしている。




互いに知らぬまま、同じ想いを胸に抱きながら――
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