初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして

エピローグ

「パパ!ママ!こっちこっち!」
元気いっぱいに呼ぶ声に、滉星と理世は顔を見合わせて笑った。
二人の前を駆けていくのは、上の子と下の子。拾ったばかりの小さな貝殻を宝物のように握りしめて、波打ち際を行ったり来たりしている。

「もう5歳かあ…」
滉星が少し感慨深げに呟く。
「本当にあっという間だったね。下の子だって、もうすぐ3歳だし」
理世は笑みを浮かべながら、そっと滉星の手を握った。あの頃、初恋を再び育んで、互いに支え合いながら歩んできた時間。気がつけば、隣には大切な家族が増えていた。

「そろそろ、あそこに行こうか」
滉星が柔らかい声で告げる。理世は頷いた。二人が高校時代の初恋を再びつないで、誓いを交わした思い出の場所――あの海辺のカフェバー。

ちょうどそのとき、遠くから「ワン!」という大きな鳴き声が聞こえた。
「ライム!」子どもたちが一斉に振り返り、声の主に向かって駆けだす。
そこには、すっかり年を重ねたゴールデンレトリバーが尻尾を振りながら待っていた。
その瞳は昔と変わらず、やさしい光を宿している。

子どもたちがライムに抱きつき、笑い声が砂浜に広がる。滉星と理世はその光景を並んで見つめ、互いに自然と手を強く握り合った。
「ねえ、私たち、まだ初恋の続きを歩いてるんだね」
「そうだな。これからもずっと」

夕暮れの空がオレンジ色に染まる。海に映るその光景は、まるで二人の未来を祝福するかのようだった。
浜辺に並ぶ四人の足跡は、波に消されてもまた新しく刻まれていく。
――滉星と理世、そして二人の子どもたち。
彼らの物語はこれからも、永遠に続いていくのだろう。

思い出の海風に包まれながら、初恋の続きを紡ぐ家族の時間は、今日もまた、静かに輝いていた。


Fin
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