さくらびと。本編
「...最近、板垣先生、君に優しくなったな」
その言葉の裏に隠された、かすかな嫉妬の感情に、蕾は気づき始めていた。
指輪をしながらも、有澤先生の心は、確実に自分へと向いている。
その事実に、蕾の心は温かいもので満たされた。
二人の間には、板垣先生との出来事を乗り越えたことで、さらなる絆が生まれたように感じられた。
しかし、有澤先生の嫉妬を思わせる発言は、蕾への想いが深まっている証拠でもあった。
その想いを、彼はまだ言葉にできないまま、ただ蕾の傍らにいることしかできなかった。
蕾は、そんな有澤先生の姿を見つめながら、いつかこの関係が進展することを、密かに願っていた。