正宗先輩と初恋を拗らせる
耳を澄ますと聞こえるバスルームの物音が
なんだか落ち着かなくて
珍しく2本目の缶ビールに手を伸ばす。

とりあえずつけた、深夜のバラエティ番組は
全く内容が入ってこない。

俺は、なんでこんなにソワソワしてるんだろう。
相手が美桜ってだけで
何もかもが違う。


カチャ⋯

控えめに開いたドアから
小さな足の爪
細い脛、白い腿が覗いて
俺のTシャツに着せられてる
ぶかぶかの美桜が、
濡れた長い髪をお団子にして
早熟の桃みたいなピンクの頬で
現れた。


なんだこれ。
めちゃくちゃ可愛い。

自分の語彙力の無さに呆れる。


なんでもない顔して
ソファに足を投げ出して座ってるけど
俺の平常心は、秒でどっかに飛んでった。

「私も飲む〜」
無邪気に缶ビールを持って隣に座った美桜。
華奢なうなじにドキッとして
慌ててビールを飲む俺。すげーダサい。

「これ、ありがと。正宗先輩の匂いする。
私も同じ匂いになったかな。なんか嬉しい。」
エヘヘ、と子どもみたいに笑って
俺のTシャツを摘むと
裾が少し上がってツルンとした腿が見えた。

"性"少年がぶり返す。
俺のブレーキぶっ壊れ。
もう余裕なんてない。


美桜の首筋にかぶりついて
余白だらけのTシャツごと抱きしめた。

「まだ美桜の匂いする。」
うなじに鼻を擦り付け
首筋を舌でなぞると

美桜の口から甘い声が漏れた。

もっと聞きたい。
ただ、それだけ。

Tシャツの裾から、滑らかな腰を撫で
背中に滑り込ませると、指がホックに当たった。
こないだ寝起きの美桜は無防備なままだったのに。

「何これ」
「え…。だってまだ寝ないと思ったし。恥ずかし。」

「まだ寝ないけど、もっと恥ずかしいことするよ。」
「ぃやぁ」
そんな声聞いてやめれる奴いねーだろ。

美桜をソファに沈めながら
首筋だけじゃなく、鎖骨や耳たぶも
くまなく貪った。
美桜の香りを吸い尽くして
ようやく気が済んだ俺は
ゆっくり確かめるように美桜の唇を塞いで
鼻にかかる吐息を堪能した。

「やだ?」
潤んだ美桜の目が俺を捉えて離さない。
長いまつ毛を伏せて、
小さく首を横に振る。

「お姫様、覚悟しろよ。」
美桜を抱き上げると
「本当に王子様みたいだね。」
と、俺の首に腕を絡めて笑った。




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