双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
聖女は魔術が使えて、その中でも複雑な魔法陣で生贄まで必要とする時を戻す魔術がある。

 生贄に必要なのは聖女と魔力を持った人間。
 つまり、カリンは僕と自分自身を生贄にする事で時が戻せてしまう。
 
「無防備なのは、僕の方だな創聖の聖女様⋯⋯」
 ひどく虚しい気持ちになって泣きそうになった。

 彼女は僕が来ると聞いて、ベッドの下に魔法陣を描いたのだろう。
 きっと、それは初めてではない。

 彼女はきっと時を戻したことがある。
 父が後1週間は生きるはずだったと彼女が発した言葉に、僕は違和感を感じていた。

 おそらく過去に僕はカリンの神聖力を見ることがなく、アリアドネを帝国に連れて来たのだろう。

 カリンに一目惚れしたとしても、父を治療する目的を考えれば僕はアリアドネを帝国に連れて来たはずだ。
 捨てられて孤児院という過酷な環境で過ごしたカリンの神聖力が残っているとは思ってなかった。

 その後、アリアドネの神聖力は残っていなくて、父は死亡した。
自動的にクリスが次期皇帝となったのだろう。

 神聖力がなくなり聖女でなくなったアリアドネなど、シャリレーン王国に返してやれば良い。
 彼女と関わる程、彼女はシャリレーン王国に戻り祖国再建の為だけに生きてきた女だという事は分かるはずだ。

 しかし、女好きのクリスが彼女のような美女を手放す訳がない。

 僕はきっとクリスを引き摺り下ろして自分を皇帝にすれば彼女をシャリレーン王国に戻すという交渉をしてそうだ。
 彼女には3カ国の君主を引き摺り下ろした実績がある。

 その後、僕はカリンが強い神聖力を持っているという報告をカルパシーノ王国に仕込んでいる密偵から受けたのだろう。

 多分、僕はカルパシーノ王国にカリンの引き渡しを求め断られている。

 過去の自分も今のような運命的な恋をカリンにしているかもしれない。

 おそらくカリンを無傷で奪う為、自らカルパシーノ王国に赴いた。そして、彼女を帝国に連れ帰るも心が得られず、体からはじまる恋に期待して彼女を無理矢理抱こうとした可能性がある。

(その結果、生贄にされたのか⋯⋯僕が過去に卑劣なことをしようとしたとカリンも言っていたな⋯⋯)

 彼女は僕が必死に彼女の心を諦めようとしても、全く諦められない苦しみなど知る由もないのだろう。愛するセルシオ国王の為なら僕の命などどうでも良さそうだ。
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