双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

34.カリン、とっても甘そうだ⋯⋯。

 ルイスは私を自分の執務室に案内すると、本棚から青い本を一冊抜いた。
 本棚が動いて、その下から地下に続く階段のようなものが見える。
 驚きのあまり声を出そうになったところを、彼に口を抑えられた。
(そうだ、今、ルイスは皇帝の命令に逆らって私を逃がそうとしている⋯⋯)

 階段の下は大きな歩行空間になっているようだった。
遠くに水の流れる音が聞こえる。
皇城から海まで繋ぐ秘密の道があるということだ。
(真っ暗でほとんど何も見えない⋯⋯少し怖い)
 
 ルイスは右手で私の手を繋いでくると、左手で小さな赤い炎を出した。
 その炎でほんのり周囲が明るく見えてくる。
 彼は火の魔力を持っている人だからだろうか、手がとても温かくて安心する。

「カリン、もう声を出しても大丈夫だよ。ここは皇族しか知らない隠し通路だ」
「そうなんですね⋯⋯」
 ルイスともう会えないかもしれないと思うと寂しい気持ちになった。
 彼が自分に好意を持っていることに、いつからか気がついていた。

 それでも、私は彼とレイリンをくっつけようとしていた。
 どこまで彼は私の気持ちに気がついて、傷ついて来たのだろう。

「カリン、セルシオ国王が君を迎えに来ているって情報が入ったよ。それと、君はカルパシーノ王国に戻ったら、そのままシャリレーン王国に出向くと良い。君はアリアドネのことを気にしていたよね。彼女は見ていられない程、国の為に生きていて誰も頼れない人だ⋯⋯この手紙を持って彼女の元に行って、君の願いも彼女の願いもきっと叶うから」
「アリアお姉様の願いと、私の願い⋯⋯ルイス、ありがとうございます」

 私はルイスから渡された手紙を握りしめた。
 
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