双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
私はとにかく気持ちを落ち着けながら、彼のプロポーズに頷いた。

「ど、どうしたのですか? そ、そういえばお土産のクッキーを食べますか? 帝国のお菓子はすごく美味しいですよ」

「カリン、君の方が美味しそうだ⋯⋯」

 船に乗ってからセルシオの様子がおかしい。
 今、私たちは船の中の部屋に2人きりだ。

 私の知っている彼は私を含めて女性に対してはクールな印象だった。
 だからこそ、彼が死に際に私に愛を語ってきた時には驚いた。

 こんなに甘い彼は見たことがなくて戸惑ってしまう。
(まさか、死期が近いんじゃ?)

 セルシオは時を戻す前、口づけしてくれたのさえ死に際だった。

「実はレースの可愛い寝巻きも買ったんです。これを着た私もお土産ですよ⋯⋯」
 自分でも何を言っているのか分からなかった。
 
 ただ、いつになく色っぽいセルシオに応戦しようとして変なことを言ってしまった。

 「カリン、とっても甘そうだ⋯⋯」

 気がつけば私はセルシオに口づけをされていた。
(これ、セルシオが死に際にやっとしてくれた口づけ⋯⋯)

 私は思わず自分を抱きしめてくる彼にしがみついた。
 彼らしくない事をされると不安で堪らなくなる。
(今度こそ、彼を守り抜いて見せる)

 気がつけば彼にお姫様抱っこされて、私はベッドの方まで連れて行かれていた。
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