双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

8.彼に囚われた愛の奴隷です。

「セルシオ・カルパシーノ国王陛下と、アリアドネ・シャリレーン王女殿下の入場です」

 セルシオにエスコートされ、舞踏会会場に入場した。
 煌びやかなシャンデリアよりも目立つ2人が目に入る。
 ルイス皇子の隣にいる金髪碧眼の美しいお嬢様が、レイリン・メダン公爵令嬢だろう。

 私とセルシオが舞踏会の開始を合図するダンスを踊る。

 オーケストラの演奏が始まり、私が1番得意な曲だと気がついた。
(完璧に踊って、セルシオに頼もしい女だと思われたい!)

「踊り、とっても上手だよ。今晩から君の部屋を用意したから、そこで眠ると良い」
 セルシオにダンスを褒められて私はとても嬉しい気分になった。

 回帰前、初めて彼と踊った時は、彼の足を踏んでしまった。
 とても痛いはずだったのに、彼はそれに指摘せず私をリードしてくれた。

「お気遣いありがとうございます。でも、初夜までは孤児院の子供たちと一緒に寝たいと思っています」

 思わず初夜に言及してしまい、いやらしい女だと思われたかもしれない。

 昨晩マリオが不安がっていた事を思うと、子供たちを放って部屋を移動することはできない。

「そうか⋯⋯君の家族のような子たちだからね。君の意思を尊重するよ」
 彼の言葉に私は驚きを隠せなかった。
(家族って⋯⋯もしかして、私の正体はもうバレてしまっている?)

 気がつけば音楽が終わっていた。

「良い時間だった。子供たちの様子が気になるなら、もう下がっても大丈夫だよ」
 微笑みながら告げてくるセルシオの言葉に胸が熱くなる。

 彼はきっと回帰前も早い段階で私の正体に気がついていた。
 それなのに、知らぬふりをして私のことを大切にしてくれた。

 私は今にも泣きそうになり、会場を後にしようとすると目の前に跪いた男がいた。
 会場中が注目しているのが分かった。

 「アリアドネ・シャリレーン王女、私に貴方と踊る栄光を頂けませんでしょうか」
 銀髪に青色の瞳のルイス・パレーシア皇子はまるで自分がこの世界の主人公であるかのような顔をしていた。

 
< 28 / 137 >

この作品をシェア

pagetop