双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
セルシオは私の前で政治的な話をすることはなかった。
 恐らく私に話しても心配をかけるだけで、どうにもならないと思っていたのだろう。
 私はとにかく、パレーシア帝国が攻めてきた時の為に剣術を磨いた。
 本を読み漁って少しでも教養を身につけ、彼が頼りにしたいと思える女になろうと思った。

 世界のリーダーとも言われるパレーシア帝国が、なぜ自ら国際的に孤立するような方向に舵を切ったのか理解ができなかった。

 姉に相談したくて、ずっと彼女を探し続けた。
 捜索範囲を広げても一向に姉は見つからなかった。
 
 唯一あった姉らしき人間を見たをしたという証言は、私の結婚式の翌日に帝国の船に乗る琥珀色の瞳の女の目撃証言だった。

 目撃者は明らかに頭からマントを被り顔を隠そうとしている人間がいたのが不可解で顔を覗き込もうとしたらしい。

 口元まで隠していたが、珍しい琥珀色の瞳が見えたので印象に残っているという話だった。

 この瞳の色は珍しく、私は自分と彼女以外でこの色の瞳を見たことがない。

 結婚式から半年後にはパレーシア帝国内もクリス皇帝の暴君ぶりに混乱しているという情報が入った。

 クリス皇帝陛下の独裁的な行いで、パレーシア帝国は急速に国際的な信用も失っていた。

 その時に私は姉はパレーシア帝国にいるのではないかと思った。
 彼女は3カ国を滅ぼしてきた『傾国の悪女』と呼ばれた女だ。

 それでも、私の見てきた姉は上品で優しそうだったので、彼女は言いがかりをつけられているだけだと思い込もうとした。

 唯一私に会いに来てくれた身内である彼女を信じたかった。

 パレーシア帝国では、皇位について1年も経ってないクリス・パレーシアに対してルイス皇子に皇位を譲るように暴動まで起こっていると聞いた。

 姉らしき人の目撃証言があった日は、ルイス皇子が建国祭から帝国に戻る船が出航した日だ。

 私はルイス皇子と姉が結託している可能性も考えていた。
 でも、姉がパレーシア帝国にいるのであれば、神聖力でベリオット皇帝陛下を助けられていたはずだと可能性を打ち消してしまった。

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