双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
私は彼が可愛いと言ってくれた笑顔を彼の頬を両手で包み込みながら見せた。
 すると彼もまた微笑みを返してくれた。

 結婚式場に到着すると、すでに参列者が揃っていた。

 ふと、視線を感じて見るとルイス皇子が私を食い入るように見つめていた。
 1年後、カルパシーノ王国を滅ぼし、私に卑劣な行為をする男。
 そして、私が時を戻す際に生贄にした男だ。

 今の彼は私の失態を上手く助けてくれたり、優しい言葉をかけてくれる。
彼のことが怖くて無礼な言動や態度をしてきたのに、咎めることなく受け流してくれた。

 1年後、セルシオの首を物のように扱い、私に卑劣な事をしようとする男と同一人物とは思えない。
 
 今のような優しい彼が1年後にも存在していても、私はきっとセルシオを失ったら彼を生贄にし時を戻すことを繰り返すだろう。
 
 気がつけば私はルイス皇子と、しばし見つめ合っていた。

 よく見ると彼の顔が赤くなっている。
 彼は、また、お酒を飲んでいるのだろうか。
 帝国の皇子なのに、いつも顔が赤い彼がおかしくて思わず笑みが溢れた。


 
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