双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

16.それは、さぞ良かったんだろうな⋯⋯。

 カリンを帝国の船に乗せることに成功した。
 
 彼女はもう離岸してから長いこと船尾で、手を振っている。
 船は旋回しているので、そもそも手を振っている方向にカルパシーノ王国はない。
 彼女はずっと外にいて寒くないのだろうか。
 温暖な気候のパレーシア帝国育ちの僕は非常に寒かった。
 
「カリン⋯⋯流石に、もうセルシオ国王陛下も手を振ってないと思うぞ」
「ルイス皇子殿下! 私はセルシオに手を振っていたのではなく、姉に手を振っていたのです。本当にどこに行ってしまったのでしょうね」

 僕はカリンの言葉に、罪悪感に襲われた。
 彼女には帝国に到着してから、本当のことを話すつもりだ。

「セルシオが昨晩、幸せそうに温かくて気持ちいいって言ってくれたんです」
 カリン唐突にが発した言葉に、俺はセルシオ・カルパシーノへの殺意を覚えた。

 結婚式での彼女は、この世のものとは思えない程美しかった。
 そんな彼女に見惚れていると、目が合って笑いかけられた。
 それだけで僕は天に昇りそうになった。

 
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