下剋上御曹司の秘めた愛は重すぎる
「だけど、これからますます忙しくなるね……」
夫婦の時間云々よりも、まずは伊吹くんの健康が心配だった。ご両親はどちらも働きすぎで身体を壊している。お父さんはそれが原因で他界しているわけだし。
「うん、そうなんだ。そこではるちゃんに1つお願いがある」
伊吹くんは決心したようにそう切り出してきた。しかし、突然彼のスマートフォンが着信を告げ、
「ごめん、電話だ」
彼が離席して自室に向かったことにより、この会話はここまでとなった。
それからの伊吹くんの生活はこれまでにも増して、さらに忙しくなっていった。
それは大学生時代の貧乏バイト生活を凌ぐほどだった。たしかに生活やお金の心配はなくなったけれど。私は彼の身体が心配でたまらなかった。
「もっとちゃんと休んで」
何度もそう伝えたけど、
「もう二度とはるちゃんと離れなくてもいいように、この仕事を成功させないといけないから」
そう言いながら疲労の滲んだ笑顔を見せる彼を、もっと必死で止めるべきだった。
――ついに恐れていた事態が起こった。
仕事中、伊吹くんの秘書の東城さんから電話が入り、私はすぐに早退して彼の搬送された病院へ向かった。
倒れた原因は過労。一体私は何のために彼の妻になったというのだろうか。
「バカ……」
病院で眠りから覚めた伊吹くんに、開口一番私は涙を零しながらそう伝えた。これは私自身にも向けた言葉だった。
「はるちゃん……」
「私の前からいなくならないでよ……。貧乏だって構わないんだよ。ホテルのことは従業員の生活があるから、簡単に潰れてもいいとは言えないけど……」
でも私の本心はもう止まらなかった。
「だけど、伊吹くんがいなくなっちゃったら、何の意味もないんだよ。お願いだからいなくならないで……」
はらはらと零れる涙、私は必死に懇願した。
夫婦の時間云々よりも、まずは伊吹くんの健康が心配だった。ご両親はどちらも働きすぎで身体を壊している。お父さんはそれが原因で他界しているわけだし。
「うん、そうなんだ。そこではるちゃんに1つお願いがある」
伊吹くんは決心したようにそう切り出してきた。しかし、突然彼のスマートフォンが着信を告げ、
「ごめん、電話だ」
彼が離席して自室に向かったことにより、この会話はここまでとなった。
それからの伊吹くんの生活はこれまでにも増して、さらに忙しくなっていった。
それは大学生時代の貧乏バイト生活を凌ぐほどだった。たしかに生活やお金の心配はなくなったけれど。私は彼の身体が心配でたまらなかった。
「もっとちゃんと休んで」
何度もそう伝えたけど、
「もう二度とはるちゃんと離れなくてもいいように、この仕事を成功させないといけないから」
そう言いながら疲労の滲んだ笑顔を見せる彼を、もっと必死で止めるべきだった。
――ついに恐れていた事態が起こった。
仕事中、伊吹くんの秘書の東城さんから電話が入り、私はすぐに早退して彼の搬送された病院へ向かった。
倒れた原因は過労。一体私は何のために彼の妻になったというのだろうか。
「バカ……」
病院で眠りから覚めた伊吹くんに、開口一番私は涙を零しながらそう伝えた。これは私自身にも向けた言葉だった。
「はるちゃん……」
「私の前からいなくならないでよ……。貧乏だって構わないんだよ。ホテルのことは従業員の生活があるから、簡単に潰れてもいいとは言えないけど……」
でも私の本心はもう止まらなかった。
「だけど、伊吹くんがいなくなっちゃったら、何の意味もないんだよ。お願いだからいなくならないで……」
はらはらと零れる涙、私は必死に懇願した。