贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。

3.愛しい弟

ヘッドリー侯爵邸に戻ると弟のレナルドが私に勢いよく抱きついてきた。
このアベラルド王国でヘッドリー侯爵家の象徴ともいえる銀髪と、母アンリエットのルビー色の瞳を受け継いだのは私とレナルドだけ。
私にとってレナルドは目に入れても痛く無いくらい愛おしい存在だ。

「お姉様、王宮でデートしてきたの? 次は僕と遊んで」
この世界で一番高価なルビーは私の弟が持っていると思えるくらい輝く期待に満ちた瞳。
レナルドはいつも愛に溢れた瞳で私を見つめてきた。

「レナルド!」
私はレナルドの温もりを確かめるように彼を屈んで抱きしめ返す。
六歳の男の子とは、どうしてこんなに温かいのだろうか。

(この温もりも今度こそ守ってみせる)

「もちろんよ。レナルド! 貴方との時間が私にとって一番大事なのよ。今日は何して遊ぶ?」
「お店屋さんごっこ!」
(お店屋さんか⋯⋯)

私はレナルドの手を引き、自分の部屋に招き入れる。
鏡台の引き出しからナイフを出して、彼に手渡した。

「今日は理容師さんごっこしよう。お姉様の髪を綺麗に切りそろえてください」
「えっ! いいの!」
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