贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
大帝国の皇太子が跪いた事に周囲が騒めいた。

「美しい人。私に貴方と踊る栄光を与えて頂けませんか」
「もちろんですわ。フレデリック」

私との口約束を守って国同士の大きな決め事をしてくれた彼。

彼の瞳に合うグリーンの礼服。いつの間に着替えたのか知らないがよく似合う。二曲目には珍しくムーディストな曲で、私は彼に身を預けながら体を揺らした。

「その礼服も準備してたの? とても似合ってるわ」
「シェリル、君は最高だな。気高くて美しい」

惚けたような視線を向けてくる彼はそっと私に唇を寄せる。私は彼を軽薄に見せても真面目な人だと認識していた。それなのに、大衆の面前で軽率な行動をとってくるのが理解できずに顔を背けた。

「そういうおふざけは本当にやめて欲しい。オスカーがどう思うか⋯⋯」
「口付けを交わそうとした時に避けたのは私が嫌だった訳ではないという事だな。奔放で男慣れした見た目をしている癖に、綱で繋がれているように頑なだ」

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