贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
「ふふっ、そんな破廉恥な事をおっしゃらないでください。私たちは沢山お話しして、絆を深める事から始めないといけませんわ。私がオスカー王太子殿下に身を捧げるのは芽生えた恋が愛に変わってからです」

手を口元に当てながら屈託なく笑う彼女は無邪気で可愛かった。捉え所のない彼女の笑顔を見る為に何でもしたくなった。

それが、危険だと分かっていてもハマってしまうシェリル沼の入り口だった。早く彼女に名前で呼んで欲しい、近い関係になりたい。彼女の頭を僕で占めたい。僕の持てる全てを彼女に捧げて、彼女の愛を絶対に手に入れる。

王族としての厳しい教育や、媚びてくる周囲の人間に辟易していた。心が死んでいく中でシェリルは唯一僕の心を揺り動かし生きている実感を与えてくれる人だった。

翻弄されている自覚はあってもシェリル沼にハマっている時間は心地良かった。
それは一生ハマっていたくなるような沼だった。

ゆっくりと時間を掛けて僕たちの距離は縮まった。
砕けた口調で話せるようになるのには二年もの時を費やした。

シェリルの十四歳の誕生日、僕は彼女に欲しいものを聞いた。
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