幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
帰りのホームルームが終わって、生徒達が三々五々パラパラと教室を出ていく。
「新田さん」
時間割を書いていた恋が振り向くと、転校生の美風が、ロッカーを背に、鞄を肩に掛けて持って立っている。
美風が言った。
「新田さんってあやかし狐の末裔なんでしょう?」
公園で出会った時と同じ、なんともないような声。
恋がなにか言おうとする前に、横から、斜め後ろの席で恋を待っていた宗介がすかさず割り込んで聞き返した。
「どういうこと?」
宗介の声は普段と変わらない。
穏やかで礼儀正しく、きちんと美風に向かっている。
美風はびっくりした顔をしない。
「えーと上野だっけ……上野は知らないの?。変身するところ見た。新田さんは、あやかしの末裔なんだ。レア種だよ、かなり。」
美風が言った。
「樋山、お前、変わってるって言われない?」
「別に。って事は上野は新田さんと組んでるのか。この地方って、あやかしの人、珍しくないよ。秘密にしてるの?。」
恋が黙っていると、美風は、薄い唇をふっと持ち上げた。
そうすると美風の整った顔はさらに引き立てられれて綺麗に見えた。
「僕、あやかし調べてたことあるんだ。前に知り合った化け狐の人が、すごく写真映り良くて。綺麗だよね、レア種の人。」
「化け狐って、何のこと?」
宗介が冷静な声で聞き返したが美風は無視した。
「あやかし狐って、美人ってだけでしょ?気にすることないと思うけど。」
美風は手に持った鞄を無聊にゆらゆらさせて見せた。
「新田さんもすごく綺麗だよね。」
そう言って笑った美風に、恋は何も言う事ができない。