幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
美風は恋をお屋敷の各部屋に案内した。
すべすべの床は広く、置いてある調度品はどれも一流で、職人の技が光る高級品ばかりだった。
二階のホールを抜けて、2人はある大きな扉の前に来た。
鍵穴に鍵を差して、美風が重たい大きな扉を開けると、中は薄暗く、ふわり、と白いカーテンが翻った。
「わあ」
恋は思わず声を上げた。
壁に、色々な画家の絵が飾られている。
どれも風景画ばかりだったが、色々な色で描かれていて、美しい。
美風は黙って歩いて行って、一番奥にある画家の絵を指した。
「これが、前に言ってた画家の。」
「凄い……」
オレンジ色と青色の溶け出した見事な夕焼けが、絶妙なタッチで描かれている。
「絵の名前は……。」
「……きれいだね。」
「夜になる手前の夕焼けを描きたかったんだって。僕は気に入ってる。」
絵を眺めながら、美風が言った。
「これを描いた画家、画集に載ってたのより、僕んちにある方が力作だって言ってるんだ。」
「そうなんだ」
「秀作だよね。この絵は父さんが買ったけど、他のは母さんの趣味。絵を集めるのが好きなんだ。」
「へえ……。」
美風が聞いた。
「新田さん、上野と絵の話したりする?」
「しないよ。何で宗介?」
「えっとね。」
美風が言った。
「新田さんときれいな物の話をするの独占したいなって思って。いっつも上野が新田さんをそうするでしょう?。羨ましかったから。僕たち2人で美しい物を愛でて遊ぼうよ。」
恋はしばらくその絵に見入っていた。