幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜


 しばらく宗介は駅前の通りの商店街を探していた。

 前に恋が狐の姿で商店街を歩くのは楽しい、と言っていた事を思い出したからだ。

 その時は人前で狐になっている事について叱ったが、こんな事になるなんて思っても見なかった。







─────もしもこのまま恋が帰ってこなかったら。







 宗介は胸が締め付けられて苦しかった。

 小さな店店が立ち並んでいる混み合った商店街は、人探しにはちっとも向かなかった。

 道の下の方を動いていくものがあってハッとすると、ただの野良猫だったりして宗介はその度にがっかりした。



 もうすぐ夕方になる。



 宗介が商店街を探していると、ズボンのポケットから、ケータイが鳴った。



『もしもし上野くん?』


 ケータイは理央からだった。

 理央のいつもの明るいトーンに、小さな雑音が入っている。



「駒井、恋居た?」

『それがさ、本人から連絡があって』


 宗介の顔がその場でパアッと明るくなったので、通りすがりの人が思わず宗介を見た。



「良かった。最低。あいつ。どこに居るって?」

『それがさ、博物館に行って、帰り道が分かんなくなってたらしいんだ。』

「は?」

『あの広告の博物館。』



 あの広告の、と言うと。

 宗介はその場で怒り笑いした。



『今日3日目でしょう。車も電車も使わなかったんだって。どうしてたんだろう?。当てずっぽうに歩いてたんだって。今電車で駅に向かってるって言ってた。』

「分かった。ありがとう、駒井。」

『探しに集まったみんなはどうする?解散していいの?』

「僕が迎えにいっとく。オーケー。みんな帰るように言っといて。ほんっと最低。」

『了解。』



 ケータイを切ると、宗介は、自転車で猛ダッシュで駅への道を走った。


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