幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
駅前の広場には花壇があり、今を盛りに花が咲き乱れていた。
色とりどりの花壇には日時計があり、一本だけ長い日陰を作っている。
宗介が広場に入ると先客が居た。
美風が花壇の端に、足を組んで座って駅の入口の方を見ていた。
「上野」
美風は気付いて目をあげた。
「帰らなかったの?」
「こっちのセリフ。」
ふーん、と美風は座ったまま宗介を見上げた。
「帰れば良いのに。」
美風が呟いた。
宗介は鼻で笑った。
「ありえないね。僕はこれから恋に言う事が山程あるんだ」
「……同じく。新田さんはほんとに。何かあったらどうするつもりだったんだろ。馬鹿なのかなって今考えてた。」
作り物の様な顔立ちの美風が顔をしかめるのはまるでドラマのワンシーンみたいだった。
「腹立ってきた。」
美風が言った。
「上野は何なんだよ。迷惑。保護者ヅラすんならちゃんと見とけよ。居なくなっちゃったじゃないか!。」
「……。」
「ほら黙った。最低。僕ならこんなことさせないのに。」
「……うざった。」
宗介は小声で毒づいたが美風は構わない。
「今タイミングだから言う。」
美風が顔をあげた。
「譲ってよ。僕あの子なしじゃ居られない。」
「断る。」
宗介が言った。
「譲れよ。僕ならこんな危ないことさせない。絶対に。」
「死んでも嫌だ。……二度とさせないから。」
美風が黙ったので、宗介は次の言葉を考えていた。
もう日は暮れて、2人はオレンジがかった夕焼けに照らされている。
駅の改札から茶色い髪の見知った顔がのこのこ歩いて来るのを見て、宗介は安堵で思考が一瞬止まった。
「恋」