幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
ところで恋は、宗介達がそうして居る間一人になってうろうろしていた。
恋は、ゴーカートに乗りたかったが、2人が居ないのでまだ見合わせていた。
もうすぐ3時前になる。
「ここに居た。」
ふいに、恋はぐいと腕を掴まれた。
振り返るとすぐ後ろにしかめっ面をした美風が居たので、恋は大いに焦って、居なくなった事の言い訳を言った。
「探されるのが好きなの?って言われるよ。まったくしょうがないんだから。」
ケータイのメールに宗介から怒り顕なメールが山ほど届いていたので、恋はケータイを持ってこなければ良かったと思っていた。
「早く宗介を探さなきゃ。」
「上野を探す?。」
美風はふいに美しい顔の表情をなくした。
「あいつ、もう帰ったよ。」
「え」
「どうして上野なんかの事を聞くの?。僕に悪いって思わない?」
「……」
「心配しないでよね、上野の事。ってかさ、本来僕たちだけで来る予定だったんだから。」
美風は恋の腕を掴んだ。
「行こうよ。上野なんかほっといて。何か乗り物乗ろう。」
と、そこで恋のケータイが鳴った。
『もしもし、恋?』
「あ、宗介。」
『何してんだよ。まったくもう。こっちはお前の事あちこち探し回ってたんだぞ。馬鹿なんだから。今どこに居るんだよ?』
「今樋山くんと居る。宗介もう帰ったの?」
『は?』
恋が美風の事を話すと宗介は苛立った声で帰ってないと言った。
結局恋と宗介は、遊園地の最初のオブジェの前で待ち合わせをして電話を切った。
「あーあ、ばれちゃった。嫌になるな。」
ケータイをしまった恋に、美風が言った。
「僕が嘘言いたくなるのどうしてだと思う?。どっち付かずの新田さん。」
美風の言い方は、非難している様にも、からかっている様にも聞こえる。
日差しが少し翳った。
向かい側のジェットコースターが、下へ向かって音を立てて走り去っていく。
「あいつさえ居なきゃ良いのに。」
美風は地面を見ながら残念そうにそう呟いた。