幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜



 ところで恋は、宗介達がそうして居る間一人になってうろうろしていた。

 恋は、ゴーカートに乗りたかったが、2人が居ないのでまだ見合わせていた。


 もうすぐ3時前になる。


「ここに居た。」


 ふいに、恋はぐいと腕を掴まれた。

 振り返るとすぐ後ろにしかめっ面をした美風が居たので、恋は大いに焦って、居なくなった事の言い訳を言った。


「探されるのが好きなの?って言われるよ。まったくしょうがないんだから。」


 ケータイのメールに宗介から怒り顕なメールが山ほど届いていたので、恋はケータイを持ってこなければ良かったと思っていた。



「早く宗介を探さなきゃ。」

「上野を探す?。」



 美風はふいに美しい顔の表情をなくした。



「あいつ、もう帰ったよ。」

「え」

「どうして上野なんかの事を聞くの?。僕に悪いって思わない?」

「……」

「心配しないでよね、上野の事。ってかさ、本来僕たちだけで来る予定だったんだから。」



 美風は恋の腕を掴んだ。


「行こうよ。上野なんかほっといて。何か乗り物乗ろう。」


 と、そこで恋のケータイが鳴った。



『もしもし、恋?』

「あ、宗介。」

『何してんだよ。まったくもう。こっちはお前の事あちこち探し回ってたんだぞ。馬鹿なんだから。今どこに居るんだよ?』

「今樋山くんと居る。宗介もう帰ったの?」

『は?』



 恋が美風の事を話すと宗介は苛立った声で帰ってないと言った。

 結局恋と宗介は、遊園地の最初のオブジェの前で待ち合わせをして電話を切った。


「あーあ、ばれちゃった。嫌になるな。」


 ケータイをしまった恋に、美風が言った。


「僕が嘘言いたくなるのどうしてだと思う?。どっち付かずの新田さん。」


 美風の言い方は、非難している様にも、からかっている様にも聞こえる。

 日差しが少し翳った。

 向かい側のジェットコースターが、下へ向かって音を立てて走り去っていく。


「あいつさえ居なきゃ良いのに。」


 美風は地面を見ながら残念そうにそう呟いた。


< 93 / 111 >

この作品をシェア

pagetop