幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
ゴーカートの前まで来ると、恋は乗り物を指さして乗ろうと笑った。
「待てよ、あれ2人乗りだろ。」
宗介が言うと、美風を睨んだ。
「お前はここで待ってろよ。僕たち乗ってくるから。」
「順番に乗るよ。」
「恋、お前どういう意味だか分かってんの。」
「ゴーカートに深い意味はないよ。」
恋はなおも駄目出しをする宗介に困惑した顔をして、美風を見やった。
「構わない。いいよ、それで。」
美風は言って、一人でゴーカートに乗り込んだ。
恋と宗介の乗った車に続いて、美風の車が一周して帰って来ると、降車口で車から降りてきた美風は恋に耳打ちした。
「やっぱちょっと寂しかったな。新田さん、次は2人で乗ろ。」
「ふざけんなよ。」
すっと目が細くなった宗介に、美風は平気な顔で言った。
「何がいけない?。認めてないんだよ、お前たちの事。一生認めない。」
美風はすぐ前の乗車口でゴーカートに恋を滑り込ませると、笑いながら宗介に手を振った。
「バイバイ、上野。」
宗介はすぐ一人用のゴーカートに乗り込むと、走り出して恋と美風の車を追ってきた。
車の中で、運転しながら美風が言った。
「安全運転、新田さん。ちょっとスピード出すけど。」
車が急カーブを切った。
「ちゃんと捕まっててね。あーあ嫌になる、まだ追ってくる。逃げるからね。」
快晴。快速に風が気持ちいい。
美風と恋の乗った車は宗介の車から逃げて、2つの車は見事なカーチェイスになった。
走り終わった後降車口に出てきた恋を、遅れて車から出てきた宗介は待ってましたとばかりに叱った。
「ばかたれ。乗るやつがあるか。この裏切り者。」
ゴチン、と頭の上に落とされたげんこに、恋は頭を撫でながら、しどろもどろにごめんなさいを言った。
美風はそれを見てちょっと微妙な顔をしていた。
「頭殴るの、それ、」
美風が続けた。
「痛い?」
美風の目がキラリと光った。
「痛かったら言って。」
恋は慌てて、
「痛くない」
と言った。