幼なじみは狐の子。2〜ドキドキの三角関係と異世界ワープ〜

特別異世界編 プロローグ






 青空。快晴。休日。恋と宗介と美風は、休みの間に出された宿題をするために自転車で図書館へ来ていた。

 図書館のテーブルについて資料を見直す宗介、資料を読んでいる恋、レポートを書く美風。
 宗介の前に恋、隣に美風が座っている。


 
「恋、ここに使う資料、これじゃあ分かりにくいよ。」

「えっ。そうかな?。ちゃんと選んだつもりだったけど。」

「小さ過ぎて見にくいし、第一映りが悪いよ。コピーする資料、もう1回違うの選んで。」

「……分かった」

「二度手間。お前は。全くもう。」

「新田さん、気にすることないよ。」


 
 美風はレポートの清書をしながら。


 
「誰にでも間違いはある。なんで上野はミスを強調するんだろうね。」

「間違えるのは恋だけ。僕は間違えない。樋山は余計な口出しするなよな。」

「上野はきついんだよ。新田さんがかわいそうだろ。新田さん、祭りについての写真、もう1回探してこれる?」

「大体どうして僕たちカップルの宿題に、樋山がくっついてくるんだか。邪魔。迷惑。納得行かない。」

「3人でやった方が早いよ。」

「新田さんと上野を二人きりにさせるもんか。当然だろ。」


  
 しばらく3人は作業していた。

 宗介はコピーした資料をカッターで切り取りながら。

 
  
「恋、ここに使う資料なんて名前だった?。出典。」

「それは……どの本だったかな。」

「馬鹿なんだから。出典が分からないと、レポートに書けないだろ。」

「確か青い表紙の本だったような……」

「青?。それならさっき僕が返却しちゃったよ。もう使わないって言ってたから。いけなかった?。」

「えええ……」

「また二度手間。ったく。馬鹿なんだから。恋、誰かに借りられる前にちゃんと探してこいよ。」

「分かった」

 

 恋が席を立った丁度その時だった。
 突然、ガタガタと地面が揺れ、その次に続く爆発音。白く強い眩しい光が辺りを覆った。


 つぶっていた目を開けて恋は驚愕した。

 目を開けるとそこには図書館の影も形もなく、周りには太い幹の木々が生えていた。
 テーブルや椅子もなくなって、地面は茶色い土に変わっていた。

 
「びっくりした……恋、大丈夫か?」

 
 宗介が恋の隣に回った。


  
「何これ」

「どういう事だよ?さっきまで図書館に居たのに。意味分かんない。」

「新田さん、怪我とかしてない?……こんな事がありうるかな。」

「異世界?。もしかして」

「としか思えない。」


 
 ちょっと見回ってみたが図書館に居た人達は3人以外居なかった。
 図書館の壁や塀もなくて、辺りはただ鬱蒼とした森に変わっていた。


 
「えええ……これじゃあ家に帰れないよ。」
 
「私、呆然としちゃって。」

「どうするのが合ってる?。こういう場合。異世界?。そんな馬鹿な……」


 
 腕を組んだ宗介がそう言った所で、どこからかグルルル、と小さな唸り声がした。

 恋が顔を上げると、灰色の狼の様な生き物が、こちらへ向かってまさに走ってくる所だった。


 
「新田さん!」
 
「恋!」

 

 とっさに宗介が恋を庇おうと前に出た。

 すると、不思議な現象が起きた。

 宗介のてのひらに、なぜか突然杖の様な物が現れたのだ。
 杖は先端から光を放ち、その光は狼へ向かっていった。
 杖の光は強くなり、狼はすぐに砂のように消えた。


「何だ?……これ……」


 狼が居なくなった後、宗介はてのひらの杖をしげしげと見た。

 

「杖……だね」

「馬鹿。そんなの分かってる」

「あれ」


  
 美風は、ポケットに何かが入ってるのに気付いた。
 美風のポケットに入っていたのも、宗介と同じ杖だった。



「こんな事ってある?」
 
「ファンタジーの世界じゃないんだから。」


 
 恋のポケットも探したが何も入っていなかった。


「とにかく、どうにかして帰らないと。」


 森には下っていく道があり、見下ろすと町に続いているようだった。

 

「油断するなよ。恋気をつけろよ。さっきみたいにモンスターが居るかもしれないし。」

「この世界が僕たちのと同じ世界とは思えないけど。とにかく、町へ下ろう。」


 
 3人は道を歩いていった。





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