幼なじみは狐の子。3〜その後の逆ハーレム〜
帰りの駅のホームの自販機で、恋はお茶を買った。
電車が来るまでの駅のホームは閑散としていて、日差しも気持ちよく、普段よりどこかのんびりしている様に思われた。
ホームのベンチで三人で電車を待っていると、ふいに恋のケータイが鳴った。
ケータイはメールでなく電話だった。
発信元は宗介となっていた。
恋が鳴っているケータイ取らずに、膝の上でそのままにしていると、美風がケータイを覗き込んだ。
「上野か」
美風はふーん、とケータイを見ていたが、突如恋の予想しなかった行動に出た。
美風はすっと手を伸ばして鞄の上の恋のケータイを取ると、通話ボタンを押したのだ。
「樋山くっ」
『もしもし恋?』
晴れた日で宗介の声は風に乗って微かなノイズが混じって聞こえた。
「もしもし?」
『……』
「もしもし上野?。コンニチハー。新田さん借りてるよ。」
『……恋は?』
「一緒に居る。向井もだけど。僕たちに何か用?」
『恋に代われ』
「嫌だね。今日は新田さんは僕のものだ。お前とは喋らせない。」
恋は必死に美風からケータイ取り返そうとしたが、美風は肩でケータイ押さえると、両手で恋の両手を押さえた。
『恋を出せ。』
「嫌だって言ってる。新田さんなら、今日は紅葉狩りを楽しんで、今から帰るところだよ。」
『……。』
「言っとくけど、新田さんが帰っても何もすんなよな。隣の家マジムカつく。早く死ねば良いのに。」
宗介が何か言う前に、美風が言った。
「別に悪い事は何もして無いよ。僕たちの逢引ってだけ。僕たち愛し合ってるから。そういう事で。じゃーね上野。バーイ。」
一方的にそう言うと美風は電話を切った。
「お、怒られるよ。」
恋が青ざめた顔で言った。
美風は笑顔で。
「ああスッキリした。僕もたまには新田さんを上野に自分のものだって見せつけたい。当然。それが愛情だよね。」
恋が呆然としていると美風が腕組みをした。
「新田さん少しはしゃんとしな。僕のだっていう自覚持って。あいつを怖がらないで。……でもこれでもし上野が新田さんを殴ったりすれば、僕のものになりやすいかもな……。」
美風は独り言ちて、頷いた。
「……。それで良いよね?新田さん。」
「よ、良くないよ。」
トイレから帰って来た律が、恋に事情を聞いてケラケラと笑った。