幼なじみは狐の子。4〜狐の子の思い〜
律と恋達で話していると、伊鞠と桂香がやって来て、記念に写真を撮る、と言い出した。
「自分の載ってる新聞と写る黒王子と白王子。今回はこのコピーで決まりね。」
「……黒白王子」
「げえ。写真撮るんですか。撮らなくていいですよ、もう充分だ。報道されてるだけでも笑えないのに。」
「写真撮られたくない。要らない、新聞に載ってる自分の写真と写ってるのを見られると、人に良く思われないかも知れないから、今回は僕はパスで。」
「ええ?どうしてよ?。撮らせて頂戴よ。黒白王子の写真必要なのよ。」
「嫌ですよ。僕新聞で使われるのウンザリ。」
「僕だって。そもそも僕は撮られるのが大嫌いだ。前から言ってるのに、先輩達は分かってくれない。迷惑だ。」
「うーん仕方ないわねえ……」
伊鞠はしばらく考えていたが、やがてふと思いついたように言った。
「じゃあこういうのはどう?」
「じゃあって?。いつもいつもその代わりが面倒なんですよ。なんだって言うんですか。」
宗介が苛立った顔で言った。
伊鞠は平気な顔で。
「まあまあ落ち着いて。今回は面倒じゃないわ。じゃんけんよ。ただのじゃんけん。」
「じゃんけん?。本当でしょうね?」
「私が勝ったら撮らせて貰うけど、あなた達が勝ったら、写真は撮らない。約束するわ。神かけて。」
伊鞠がそう言ったので、宗介と美風と伊鞠はじゃんけんをすることになった。
果たして、じゃんけんぽんでじゃんけんをすると、結果は宗介と美風がパーで、伊鞠がグーだった。
「やった!」
宗介がそう言って笑い、美風もホッとした顔を見せた。
しかし、伊鞠は平気な顔で言った。
「じゃんけんは負けるが勝ち。負けが勝ちなのよ。」
「はあ?」
「君たちは勝ち。つまり負け。じゃんけんに勝って勝負に負けたということね。」
「何言って……」
「笑って!」
伊鞠はカメラを取ると、強引に宗介と美風にシャッターを切り始めた。続いて桂香も同じ様に壁新聞の前でパシャパシャパシャと宗介と美風に色んな角度からシャッターを切る。
「おかしいだろ。加納先輩異常!。」
「そんなのずるですよ加納先輩、聞いてません!」
「聞いてませんはこっちの台詞よう」
カメラを手に跳梁跋扈する伊鞠と桂香に、宗介と美風は怒り笑いで、壁新聞の自分の写真を気にしながら写真を撮られていた。