幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
舞台袖に向かう廊下では、宗介と美風がだるそうに椅子に座っていた。
「何が黒白王子の握手会だ。頭どうかしてんじゃねーの。」
宗介が毒づくと、美風が言った。
「僕たちが揃って出なきゃ、ファン達に新田さんを引き渡すって言われたから。上野も出ろよ。嫌だけどしょうがない。」
「芸能人でもないのに握手なんて。狂ってる。人の手なんか触りたくないのに。ファンって言ってくる奴らと話をする気なんかないし。僕の顔、無駄に人気出て、超だりい。樋山だけが握手会参加しろよ。お前は女子に当たりが柔いだろ。吐き気がする。僕はそうじゃない。」
「2人揃ってって言われたから、お前が来ないと新田さんが危ない目にあうかも知れないだろ。僕だって、マナーで優しくしてるだけで、他意なんかない。面倒だけどそういうものだろ。この間なんか後輩の女子を泣かして、お前は性格が悪いんだよ。新田さんもそういう所を評価すべきだ。」
宗介が伊鞠に呼ばれて立ち上がった。
続いて美風も立ち上がる。
「僕の手を握るのは恋だけで良い。恋に悪い。」
「新田さんが無事で居るためなら、なんだってする。」
「お前に恋は関係ない。あー畜生超うぜえ。」
……。