幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
バシャっと音がして、服が重くなる。
最初、恋は何が起きたのか分からなかった。
ビショビショになった制服を見つめて、恋は、
「嘘」
と呟いた。
「天罰だ!」
美風が何か言う前に、ペットボトルを持ったうららが叫んだ。
「いっつもいっつも新田恋ばっかり!。ずるい!。」
「黃崎、何すんだよ。落ち着けよ。」
美風がうららを睨んだ。
うららは潤んだ目で美風を見あげた。
「ずるいです美風様。危ないって私達の事でしょう。気をつけなって私達の事でしょう。分かってます、分かってますけど。あんまり見せつけないでください、私どうにかなりそうで。」
「恋」
宗介が素早く制服の上着を脱いで恋にぼすりと被せた。
と、とたんに黒王子ファンからうめき声。
「あーあ、姫は良いなあ。姫ばっかり。」
「まあ公式だから。しょうがない。」
「姫くらい綺麗だったら私でもあり得たのかな。切ない。」
「見たくなかった。今日来なければ良かった。」
「どうせ姫なんだから、黃崎さんも辞めれば良いのに。」
宗介は恋を抱き寄せると、うららに言った。
「樋山はやるよ。樋山の事は好きにして、恋に近付かないで。恋は公式で僕の彼女だ。新聞にも書いてある。手を出したら許さない。」
「何を勝手な……新田さん。」
「美風様、もっと私達の事を考えてください。二股女の新田恋なんかより、美風様を一途に思っている私達の事をもっと。」
しんとした壇上で、恋は困り顔で宗介の制服を持ったまま立ちすくんだ。