幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
宗介と美風はパシャパシャと写真を撮られて被写体になっていた。
二人ともポーズを取ると言うよりは棒立ちで、やる気なさそうに講堂の椅子に凭れたりしていた。
「黒王子、笑って笑って。笑顔見せてください。」
「白王子、顔あげて。こっち向いて!」
「映りいいなあさすが上野先輩。黒王子!」
「樋山先輩こっち向いてくださいよ。ちゃんと写ってください!」
10人ほどの写真を撮っている群に、理央は恋を連れて割り込んでいった。
「上野くん、樋山くん!」
「あ、恋、駒井」
宗介が寄りかかっていた椅子から体を離した。
「私達にも写真撮らせてよ。カメラ持ってきたんだ。」
「良いけど、新田さんは来ない方がいいんじゃ。」
「もう来ちゃったんだからしょうがないよ。恋、樋山くんと上野くんと並んで並んで。」
恋が宗介と美風の間に立つと、女の子達の群れからため息が漏れる。
不満の声もちらちらあったが、宗介達は無視した。
恋がピースサインをしながら、ふと視線に気づいて横目で見ると、販売会の壇上からグッズ争奪戦に参加していた黃崎うららが手を止めて顔をしかめてこちらを見ている。
「あーあ、良いなあ姫は。いつもいつも。愛されてて。」
「黒白王子の三角関係なんて贅沢だよね。羨ましい。姫達はいつも新聞を賑わしてる。」
「片方で良いから私を好きになってくれないかなあ。夢のまた夢だけど。そしたら嬉しいのに。」
「三角関係。曖昧な関係。姫はどっちつかずだからずるだよ……。」
「はい、チーズ!」
ざわめきを背景に、理央がパシャリ、と3人を撮った。