幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
 






 しばらく宗介と美風が言い合いを続けていると、ガラガラと教室の戸が開いて、新聞部の伊鞠が入って来た。


「おはよう、新田さん、上野くん、樋山くん」

「加納先輩おはようございます。朝から元気ですね。」

「新聞部の先輩が、朝から一体何しに来たんですか。」


 宗介がしかめっ面で腕組みをして聞くと、伊鞠の目がきらりと光った。


「大事な用事。今日はちょっと警告に来たのよ」


 声を潜めて伊鞠が言った。


「警告?」

「黒白王子のファンクラブの動きが、最近活発化して来てるの。」


 伊鞠が説明した。


「自分達のことをもっと王子達にアピールしたいとか、姫の存在について一筆啓上したいと思っているファンが沢山居るのよ」

「それで……」

「そこでよ。黒白王子の三角関係の頂点である新田さんに天誅を、って親衛隊たちが言っているのを聞いたから。それでその事について教えに来たの。」


 きょとんとしている恋に、宗介と美風は顔を見合わせた。

 廊下には、今日も宗介と美風を盗み見る女の子達が沢山居た。ファンクラブの団扇を持っている子も中には居たが、別段いつもと違っている様には思えなかった。


「狂ってる。恋は僕の彼女だ。新聞部で公式にもなってる。なーにが天誅だ。」

「親衛隊たちは、新田さんが黒王子に一途じゃないのを怒ってる、って言う建前だけど、結局は嫉妬してるのよ。」

「分かります。その謂がもっともらしく聞こえるの。でもそんなの彼女達には関係ないと思うけど。」

 
 美風が言った。

 
「とにかく、危ないから。気をつけて貰える様に、新聞部から注意に来たの。嫉妬って微妙な感情だから、仮に事件が起きたとしても、校内新聞で取り扱う訳にはいかないのよ。だから余計な事件は新田さんに悪いと思って。」

 恋がぽかんとしていると、宗介が怒り笑いで口を開いた。


「だってさ恋。気をつけとけよ。あー危な。あいつら狂ってるから、何されるか分からないぞ。できるだけ人中に居て、何かあっても平気な様にしなきゃ。言っとくけど1人になるなよ。どう考えてもまずいから。」

「僕たちが居る間は良いけど、ふいに1人になった時が。新田さん、できるだけ僕たちから離れないようにして、目の届く所に居なね。ちゃんと守るから。ほんとに危ないんだから。」

「……」

「お前のせいだぞ、樋山。白王子ファンは過激なんだって、聞いたことある。」

 宗介は美風を睨んで当てこすった。

 
「こっちの台詞。根強いのは黒王子ファンの方だろ。新田さん、注意してね。」


 恋はいまいち状況が飲み込めないまま頷いた。


 
 

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