幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
恋が教室に行くと、理央が先に着いていて美風と恋の事を待っていた。
「恋!」
「あ、理央」
「新田さん今日遅いね。いつもはもっと早いのに。」
恋が席に着くと、理央が口を開いた。
「ねえ、恋、『生涯かけてあなたに愛を誓います』って台詞どう思う?」
「え?」
「なんかね、今黒白王子のファンクラブが、黒白王子に言って欲しい台詞を募集してるの。私も2・3個応募しようと思って。大賞に選ばれると商品券が出るんだ。」
「最終的には、僕達に言わせたいらしいんだ」
美風が微妙な顔で言った。
「愛を誓う系の台詞とか、駄目出しをする系の台詞とか、みんなが面白がって応募してる。ほとんど全部が一生言わなそうな芝居がかった台詞ばっか。どれが選ばれるにせよ最終的には僕達が言わなきゃならなくなるらしいんだ。ほんと、みんなどうかしてる。どうにかしてよ。」
「私考えたんだよね。女子が言われたいのって、自分を叱る系が多いと思うんだ。それで『ったく、僕が居ないと駄目なんだから』って台詞にたどり着いたんだけど、それって上野くんが恋にいつも言う奴だって気づいてさ。上野くん元々大分萌え系なんだろうね。」
それから理央は話を変えた。
「そういやさ、恋、メイクフェスティバルに参加する気はない?」
「え?」
「アマチュアのメイクの祭典。隣町のホテルで開催されるお祭り。二人一組になって、ドレスアップしてお化粧するの。私人にメイクするの好きだからさ、恋が一緒に出てくれないかと思って。」
「恋!」
教室の戸を開けて入って来たのは宗介で、宗介は黒板の前を通って恋の席へ来た。
「あ、上野くん。上野くんも恋にメイクフェスティバル勧めてよ。」
「メイクフェスティバル?。なにそれ。」
「ねえどう思う?樋山くん。恋におめかしさせて、お人形にするの。恋って自分で分かってないけどすっごく綺麗な顔立ちしてるから、目立って評判になると思うんだよね。」
「メイクか……面白いんじゃない?女の子には。いいと思う。新田さん参加してみたら?」
「化粧なんてまやかしだ。肌が荒れるだけ。って言っても、まあ、公の場で社交練習にはなるだろうな。」
宗介が言った。
「大人になって、僕と結婚したら、公式の場には薄化粧位はしていかなきゃならない。良い練習になるんじゃない。」
「僕は大人になっても化粧しろって言わないよ。親もしないし。新田さんは地でいれば良いよ。」
「樋山には関係ない。僕と恋の将来の話。」
「恋が行ってくれなかったら、明日香は部活だし化粧とか好きじゃないし、行ってくれる人が居ないんだ。どう?恋。一緒に行ってくれない?」
「うーん……」
恋はじゃあ行ってみようかな、と考え顔で理央に言った。