幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜






 運悪く、恋が壺を壊したタイミングで両親が外から帰ってくる車の音がした。

 恋は真っ二つに割れた壺の破片を拾うと、慌てて自室に持ち帰った。

 
「ただいま……あら?」


 恋の母親は和室を覗いて、さっそく壺がないのに気付いた。


「恋、床の間の壺知らない?」


 部屋から出てきた恋に母親はずばり聞いた。


「し、知らない」

「変ね。あれは大事なものだから、触らないようにあそこに置いてあったのに。誰も壺なんて触らないから、なくなるはずないんだけど。うちの家宝よ。売ったら高いわよ。恋に相続させる大事な壺なんだから。」


 言い出せなかった恋は疲れた顔をして自室に戻った。




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